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TOPNEW INFO 最新のお知らせ > 私の愛読書①

2019.04.04 : 私の愛読書①

院長の髙木です。
本日は私の好きな小説をご紹介したいと思います。
坂本龍一氏のアルバム「1996」には名曲「The Sheltering Sky」が収録されています。


ポール・ボウルズの最初の傑作で戦後アメリカ文学の代表作である「シェルタリング・スカイ」をベルナルド・ベルトリッチが1990年についに映画化しましたが、その音楽として作曲されたものです。この曲はとても映画に溶け込んでいて、曲独自の魅力を湛えています。
当時、坂本氏はローマ郊外にある撮影所にポストプロダクションをするために、約700枚のCDをもってスタジオ入りしたんだそうです。すでに編集してあるサハラ砂漠を舞台としたラッシュフィルムを見ながら、55秒あるいは1分45秒あるいは2分30秒という映画の感情の高まりに沿って秒単位で作曲するのが凄く難しかったと後に語っています。
曲を聴いていると、無性に原作を読み返したくなりましたが、すでに絶版で書店には置いてなかったのでAmazonで購入しました。
話は世界大戦がやっと終って戦後社会が広がり始めた1947年、ニューヨークに住んでいた倦怠夫婦のポートとキットが、親友のタナーを伴ってアフリカ旅行を企てることから始まります。企ては夫婦関係の修復のためだったので、3人は北アフリカのアルジェからサハラの奥へと旅するのですが、うまくはいかない。夫のポートはチフスに罹り、苦しんだあげくに死んでしまう。これを機にタナーも別行動をとるようになります。一人残されたキットは、宿舎にしていたフランス警備隊の屯営を抜け出すのですが、なんだか異様な心身の衝動に駆られている。アラブ人の隊商がこれを助けると、キットはそのハーレムのような後宮めく日々に身を任せるようになり、しだいに自分の中の異質に苛まれ、ついには半ば発狂寸前になってアルジェに戻っていく。
物語はキットがアルジェに戻るところ、すなわち冒頭の町に戻るところで終わりますが、そんなふうに作者に突き放されてみると、なんともいえない読後感が押し寄せてきます。そういう小説です。
アメリカ育ちのいっさいの文明化力が打ちのめされて、それがポートとキットにそれぞれのしかかっていくという展開は、文体の透明な運びとは裏腹に読者に重い課題を移譲させてきます。
急に砂漠の中に放り出されたら一体どうなってしまうのか?
高度な文明をもってしても太刀打ちできない巨大なる自然を前に人は呆然と立ち尽くすしかない。
人は何を拠り所に生きているのか?それがわからなくなるとどうなってしまうのか?
日本では長らく「極地の空」と訳されてきました。
カミュやサルトルに並ぶ戦後の実存主義文学の傑作です。

シェルタリング・スカイ」新潮文庫
ポール・ボウルズ



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