院長の髙木です。
本日ご紹介する好きな小説は東野圭吾氏の「秘密」です。
1998年9月に刊行され、第120回直木賞、第20回吉川英治文学新人賞などにノミネートされた作品です。
妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落してしまう。そして妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。その日から杉田家の切なく奇妙な「秘密」の生活が始まっていく。物語は夫・平介が妻と娘の乗ったバスが事故にあったニュースを観るシーンから始まります。夫婦と親子の愛情、「いつかは最愛の妻の魂がのりうつった娘を送り出さなければいけない」、つまり、愛した人と2度別れなければいけないという、重い宿命を背負った夫の苦悩が文章から伝わってきます。個人的に哀切なラストの「秘密」は心が震えました。結末をハッピーエンドととらえるかどうかは人それぞれですが、是非一度は男性に読んでいただきたい作品です。
「秘密」(文春文庫)
東野圭吾