こんにちは。院長の髙木です。
インプラントの構造は大きく2つの部分、歯根に相当する骨内部分(インプラント体)と歯冠に相当する部分(アバットメントと上部構造)
から構成されます。
今回はこのうちのアバットメントについて解説します。まず、インプラント体とアバットメントの連結機構は、①インプラント体
トップの外側に六角形のナット状回転防止機構を有するエクスターナルジョイント型、②インプラント体内部に回転防止
機構を有するインターナルジョイント型、③インプラント体内側にテーパー状の連結部があり、円錐状アバットメントとスリップ
ジョイントで結合するテーパージョイント型に分類されます。
エクスターナルジョイント型は機械加工が容易で、規格化によりシステム間に互換性をもたせやすいことが特徴です。
インターナルジョイント型はエクスターナルジョイント型と比較して、機械工学的に側方圧に対する抵抗力が大きく、応力の集中
状態もまったく異なります。現在はさまざまな長所により、使用頻度は増加しており、多くのシステムが競って開発を行っています。
テーパージョイント型(スリップジョイント型)はインプラント体上部にアバットメント連結用テーパーが付与されており、アバットメント
をねじ込んでいくとテーパー部を押し広げ、くさび効果により強固に固定されます。当院で採用しておりますアストラテックインプラ
ントの連結機構はこのテーパーフリクションです。
次にアバットメントの種類について解説します。、上部構造の固定様式はネジで止めるスクリュー固定式とセメントで止めるセメント
固定式にに大別されますが、セメント固定式のアバットメントにはワンピースタイプとツーピースタイプがあります。ワンピースタイプ
は回転防止機構がなく、お口の中での位置の再現性と支台(間)の角度補正に制限があるために、臼歯部などでインプラント間の
平行性がよい場合のみに使用されてきました。この欠点を補うアバットメントとして、ツーピースタイプで支台形成が可能なチタン製
アバットメントが1990年代初頭から提供されはじめたのです。現在セメント固定式で使用されるアバットメントは以下の3種類です。
①既製の形成用ツーピースアバットメント
ツーピースタイプの基本構造はチタン製のシリンダーとアバットメントスクリューからなります。
シリンダー部の削除による支台形態の付与が容易で、ある程度の角度補正が可能なため、機能的かつ審美的にも満足のいく補綴
装置の製作が可能となります。材質はチタン製とセラミック製(アルミナ、ジルコニアなど)であり、とくに前歯部で上部構造にオール
セラミッククラウンを応用する場合には、既製のセラミックアバットメントを使用する頻度は高いといえます。
②鋳接によるカスタムアバットメント
鋳接によるカスタムメイドのアバットメントは、UCLAアバットメントを用いて支台形態をワックスアップした後に金合金で鋳接する方法
が一般的です。このアバットメントの利点は、支台歯形態付与の自由性、インプラント埋入角度の補綴的補正、支台歯間の平行性の
確保、適切なエマージェンスプロファイル(インプラント体からの立ち上がりの形態)獲得などで、技工操作の容易性により使用される
頻度は高iいといえます。
③CAD/CAM応用アバットメント
CAD/CAMにより、インプラントの接合部までを含めた完全なカスタムメイドアバットメントの製作が容易です。
CAD/CAMとは、Computer-Aided-Design/Computer-Aided-Manufactureingの略でコンピューターを使用して製品の設計、製造を
するためのシステムのことです。歯科領域では従来手作業により作製されてきた技工物の一部をコンピューター制御の機械におき
かえる一連のシステムをさします。作業の効率化と品質のバラツキ防止が可能となり、従来利用できなかった材料を使用可能なもの
にしました。このアバットメントの特徴は、鋳接によるカスタムアバットメントと比較して(1)生体親和性に優れる、(2)インプラント体
トップからのエマージェンスプロファイルの付与が可能なこと、(3)補綴歯種と調和したアバットメントサイズの付与が可能なことなどです。
ただし、アバットメント製作時までに理想的な暫間補綴装置による歯肉形態を作り出さないと意味がなく、技工施設とのコミュニケーシ
ョン(情報交換)ならびに時間的な制限も大きいことが注意点となります。
この症例はGC社のAadva Ti(チタン)アバットメントで、CAD/CAM応用アバットメントです。インプラントはアストラテックの
オッセオスピードTⅩで、連結はテーパードジョイント型です。
適切なエマージェンスプロファイルの形成が得られた状態です。
アバットメントが連結された状態です。
アバットメントの上にセラミックの上部構造物を装着し完了となります。
レントゲン所見です。インプラント体とアバットメントはスリップジョイントにより強固に連結されています。
後方2本はサイナスリフトを併用しましたが骨置換も良好といえます。
このようにインプラント治療においてはさまざまなパーツや材質があり、作製方法も異なります。
「取り外しの義歯」を使ってらした方が「インプラント治療」に踏み切られ、上部構造が装着された際の嬉しそうなお顔を
拝見するのが毎回楽しみです。
そこからは大切に使っていただくために定期検診・メインテナンスは欠かせません。
詳しい検査・その方にあった時期、術式など丁寧な説明を行っております。
他院でインプラント治療は難しいと断られた方でもあきらめずにお気軽にご相談下さい。
院長 髙木謙一