インプラントの治療について
歯の構造は、目で見える部分の歯冠部分と、それを支える歯根部分から成り立っています。重度のむし歯や歯周病、事故やケガなどで不幸にも歯を失うということは、支えとなる歯根部分も失ってしまうということです。よく差し歯と混同されることが多いのですが、差し歯は歯根部分が残っている方が対象となる治療です。インプラント治療は支えとなる歯根も完全に失われた方が対象となります。ブリッジや入れ歯も同様です。歯を1本失った場合、両隣の健康な歯を削って人工の歯を固定してかぶせる方法がブリッジで、奥に歯がない場合は連結できないため金属製のバネ等用いて取り外して使用するのが入れ歯です。
噛むという行為は、想像以上に強い力を、歯とあごにかけています。奥歯1本にかかる荷重は、その人の体重にほぼ等しいと言われています。ブリッジの場合、1本あたりにかかる荷重は約1.5倍とされています。1本1本の歯は個々の役目が異なり、連結することによって自然な歯の動きが抑制されます。削られた歯は痛みやすくなったり、すき間の清掃が困難になると汚れが停滞しやすくなることで、むし歯や歯周病のリスクが高くなり、これにより支えの歯がだめになってしまうと、さらに広い範囲のブリッジに作り直さなければなりません。
取り外しの入れ歯の場合、歯が完全に無くなった部分の骨は、噛むことによって得られる刺激がないために次第に痩せていきます。また、残っている歯根が移動してしまうため、当初しっかり作った入れ歯は次第に合わなくなり、歯ぐきに当たって痛みがでたり、バネが折れたり、緩んだりして何度も作り直す必要が出てきます。また装置が大きいので当然異物感があります。
失われた歯根の部分にチタン製の歯根を埋め込んで義歯の支えとするのが、今日行われているインプラント（人工歯根）療法です。チタンは骨と接合する特性をもっており、地球上で最も人体アレルギーの少ない金属といわれています。この治療方法では、残っている健康な歯への負担が増加することはありません。あごの骨には自然の歯と同じように刺激が伝わり、力をかけることができることから、骨の変形も少なくなることが知られています。あごの骨にしっかりと固定されるインプラント治療は、取り外しもないため、入れ歯などと比較してメンテナンスや機能面でも優れています。他の歯を傷つけることも装置を入れる異物感もなく、自然で美しい歯を取り戻せる高度で優れた治療方法です。
インプラント治療のメリット・デメリット
メリット
正確な治療方法で、適切なケアを行えば自身の歯と同じ様に話しができ、同じ様に噛むことが出来ます。
あごにしっかりと固定されているため取り外しの必要がありません。
審美性に優れている為、見た目の美しさも兼ね備えています。
周りの歯を傷つける事がないため健康な自分の歯を自然に残せ、結果的に他の歯の寿命に貢献します。
機能面においても見た目の美しさ（審美性）においても優れた治療です。
デメリット
外科手術の必要があります。
顎の骨が著しく弱くなっていると手術が難しい場合があります。
症状によっては治療期間が長くなる事があります。
重度の糖尿病など全身疾患に罹患されている方は手術ができない場合があります。
保険適用外の診療ですので保険治療と比較すると費用が高額となります。
メンテナンス
なぜメンテナンスが必要なのか
きちんと骨と接合したインプラントは、長期間にわたり口腔内で固定を得ることが出来ます。
しかし、いくらインプラントと骨が接合していても、土台となる骨の部分にトラブルが起きれば、骨はインプラントを支えることが出来なくなってしまいます。また、天然の歯と同じように、歯周病が重度に進行した場合も骨はインプラントを支えることが出来なくなります。
インプラントを良い状態で保つには定期的なメンテナンスと、徹底したプラークコントロールが必須になります。
実際にメンテナンスではどんなことをするのか
■ 歯科医院でのメンテナンス
咬み合わせは常に一定のものではなく経年的に変化していきます。
治療終了後そのまま放置してしまうと、インプラントに過度な負担がかかり、かぶせ物が破折したり、歯周病が急に進んだりすることがあります。そこで、定期的な咬み合わせの状態のチェックやレントゲンによる診査が重要になります。
また、普段のブラッシングでは落としきれない汚れを歯科医師や歯科衛生士によるプロフェッショナルケアで対応していくことや、ご自宅でのケアが正しく行えるように、ブラッシング指導を受けていただくことも大変重要になります。
■ ご自身での毎日のメンテナンス
インプラント治療を受けたからといって、何か特別なことをしなければいけないわけではありません。
基本的には、天然の歯と同じようにしっかり歯磨きをするだけです。 とはいい、インプラントは人工物ですから、天然の歯と違って境界部分があります。その部分は汚れがたまりやすいところであり、また、汚れを落としにくいところでもあります。
そこで、歯ブラシといっしょに歯間ブラシや、デンタルフロスなどを使っての細かなケアをお勧めします。
