あごの骨に埋まってしまったままの歯を「埋伏歯(まいふくし)」とよびます。乳歯よりも永久歯に起こりやすく、部位的には智歯(親知らず)>犬歯>第2小臼歯の順に多いとされています。上あごでは正中に通常の歯数よりも多い余分な歯(正中過剰歯)も埋伏することが多いです。日常ではほとんどが智歯(親知らず)のケースです。これらは全身的原因(症候群など)による場合と、局所的原因による場合があり、局所的には乳歯がずっと残ってしまっている場合(晩期残存といいいます)、歯が萌出してくるスペースが不足している場合、あごの中に袋のご病気(含歯性嚢胞)がある場合、歯のまわりの骨(歯槽骨)が肥厚している場合、口腔粘膜が肥厚している場合、歯牙腫という歯から由来する腫瘍などがある場合などが原因となります。
埋伏歯による障害は半埋伏(歯が半分埋まっている状態)の場合は歯冠周囲炎(特に親知らずによる智歯周囲炎が多い)を生じ、完全に埋まっている場合は歯列不正や他の歯の歯根吸収(歯の根が溶けてしまう)を生じます。
それでは歯を抜いた後はどうなるの・・?と心配なさる方が多いのですが、抜いた部分は血餅(血の塊)で満たされて、約1週間でこれが幼若な肉芽組織に変わり、さらに20日間くらいで線維性結合組織に器質化された後、続いて化骨が形成され、その後約6~12か月で骨造成がなされて、成熟した骨組織になります(周囲と同じ硬い骨)。
また創部(歯ぐき)表面は抜歯後4日目頃より辺縁から上皮化が始まり、通常40日以内に完全に上皮で覆われます。
簡単にいいますと、歯を抜いた部分はきれいに歯ぐきが閉じて、内部の骨も埋まるということですね。ご安心下さい。
親知らずは大体8歳頃からあごのなかに形成され始めるのですが、germectomy(歯胚除去)といって歯が完全にできる前に早期に除去してしまう場合もあります。
あごの中に埋まった親知らずは歯冠部分から形成されていくのですが、時間が経って歯根部分も完成してしまうと、湾曲してきたりして、骨への引っ掛かりも大きくなり、抜歯するのが少々大変になってしまいます。
何度も炎症を繰り返したり、何らかの障害があれば早期に抜歯なさることをお勧めしております。
院長髙木謙一