前回はインプラントを埋入する時期として抜歯と同時にインプラントを埋入する抜歯後即時埋入(immediate placement)について書きましたが、今回は抜歯後4~8週間後の難組織(歯ぐき)治癒後にインプラントを埋入する抜歯後早期埋入(early placement)についてご説明します。厳密には抜歯後12~16週間後、硬組織(骨)も治癒してから埋入する場合は抜歯後待時埋入(delayed placement)に区別されます。即時埋入は、治療期間や手術回数が減らせるという面ではよい方法ですが、軟組織の一次閉鎖が困難なことによりインプラント体や移植材の感染のリスクが増す上、硬・軟組織の吸収程度の予測も困難になります。通常抜歯窩は1週間で肉芽組織により覆われ、6週間で再上皮が完成します。ですので難組織が治癒している時期に行う早期埋入は、インプラント体や移植材の軟組織閉鎖が可能となり、また肉芽組織による多くの血液供給により予知性が高くなります。難・硬組織を増生する場合は、難組織から増生するのが基本ですので、難組織が治癒していることは埋入する位置の指標が明確となります。埋入やカウントゥアの形成もしやすくなります。
交通事故で上あご前歯の歯根破折を認め保存不可能なため抜歯と診断されました。
インプラント治療を希望されたため、審美面を考慮し早期埋入を予定しました。
抜歯後4週間後の口腔内所見です。歯肉は閉鎖されています。
抜歯後4週間後のCTクロスセクション像です。骨は治癒はしておりませんが、難組織が治癒していることは非常に有利になります。
そして4週間後の時点でインプラントを埋入します。
手術終了時所見です。歯肉をしっかりと縫合できることにより感染のリスクが低下します。また骨接合が早いオッセオスピードインプラントを使用することで早期の上部構造物の装着が可能となり、歯肉退縮の問題が解消されることにより審美的なインプラント治療が可能となります。
手術回数の減少のため、即時埋入が有効な場合もありますが、早期埋入は審美サイトにおいては最も有効な方法であると考えています。
院長 髙木謙一