「インプラントは良い治療だと思うけど、ブリッジと比較すると実際どのくらい長持ちするの?」と疑問をお持ちの方を対象にご説明いたします。
ブリッジは歯を失われた部分の両隣りの歯を削って連結された冠をセメントで装着する治療法ですが、その平均寿命は約8年とされております。土台となる歯が、歯のない部分の力も支える治療法ですから過度な負担がかかりやすくなるのは当然です。ブリッジ装着後10年で約50%に何らかのトラブルが生じるとされております。
一方、インプラントの場合多くの研究データから10年以上は問題なく機能するとされております。実際40年以上経過しているインプラントも数多くあります。インプラント治療後10年で90~95%が生存しているというデータが今日では一般的です。
約7年前に治療を受けた左下の奥歯のブリッジが外れてしまったうえ、一番奥の土台の歯が痛くて食事がとれないと来院された方のケースです。
ブリッジが何年もの間負担に耐えてきたものの、いよいよ限界に達し、内部に微小漏洩を生じ、土台の歯のムシ歯が徐々に進行していき、ついには神経に感染してしまったため激痛となったのです。さらに過度な負担と不適合なブリッジにより土台の歯はグラつき始めていました。当初土台の歯は神経がある状態でブリッジが装着されたため数年は問題なく機能しましたが、今回のように神経がなくなると状況は変わってきます。歯は神経がなくなるともろくなり破折等を生じやすくなります(大抵奥歯が抜歯に至るときは神経がないために破折してしまったケースが多いのです)。このような歯に対して再度ブリッジの土台とするには大変リスクがあります。言い換えれば、土台となっていた歯を独立させて負担を取り除き、寿命を延ばすためには失われた部分の治療法の第一選択はインプラントとなります。
実際にこのケースにおいても失われた部分にインプラントを植立することにより、土台となっていた歯の負担は取り除かれ、さらに根の治療を行った後、歯のグラつきや痛みはピタリと消失しました。当初ブリッジではなくインプラントを行っていたら、土台となっていた歯は神経がなくなる以前にまったく削られる必要もなかったのではないでしょうか。
このようなケースから歯を失った場合、
「歯をできるかぎり削らない」
「歯の神経を抜かない」
「土台に負担をかけない」
ことがいかに歯の寿命にとって大切かということがいえます。
日常こういったケースは少なくないのです。一本歯を失った場合の治療法の選択は慎重に検討していただきたいと思います。
諸外国と比較し、最近日本ではやたらとインプラントがネガティブに捉えられているようです。マスコミの影響でしょうね。それではインプラント以外の治療法が優れているか?というとそうとも言えません。
現在日本では歯科医師免許を有していれば経験・技術を問わず誰でもインプラント治療が行えますから、日常多くの医療機関で行われているのが現状です。当然事故も出てくるはずです。インプラントにおける医療トラブルのほとんどが術後出血、神経損傷、上顎洞への穿孔などの手術トラブルによるものです。安全な外科手術を行うためには多くの経験、知識が必要なことはいうまでもありません。
「インプラント治療は良質で優れた治療法」であることを再度国民の方に認識していただくため、専門家がきちっとした結果を示していく他ありません。インプラント治療をお考えの方は安心して受けられる医療機関を慎重に選択なさって下さい。
院長 髙木謙一