院長の髙木です。先日東京都美術館に「クリムト展 ウィーンと日本1900」を観に行ってきました。
今回の最大のみどころは、過去最大級のクリムト展だというところ。初期の自然主義的な作品から、「黄金様式」の時代の代表作、甘美な女性像や清々しい風景画まで、油彩画25点以上が展示されています。また、初来日となる「女の三世代」が公開されていますよ。
高校時代に「接吻」と「女の三世代」を見て、華やかでキレイな絵だなぁと感銘を受けた記憶があります。
「女の三世代」は、クリムトが深い関心を寄せた生命の円環をテーマに、人間の一生を幼年期、青年期、老年期の三段階に分けて寓意的に表す作品です。安らかに眠る幼子を優しく胸に抱く、若く美しい裸体の女性は、夢見るかのように目を閉じています。頭部から身体をつたって流れるように装飾的なモチーフで飾られた姿は、生命の美しさ、輝きを体現しているかのようです。一方、背後には年老いた女性がうなだれ、老醜を恥じるように手で顔を覆っています。3人の背後に広がる灰色と黒の平面は、生あるものに不可避の死あるいは滅びの象徴的表現ともいえると解説されています。この老婆はオーギュスト・ロダンの彫刻「老いた娼婦」から着想を得ているそうです。
クリムトの代表作の一つ「ユディトⅠ」。旧約外典のユディト記に記された美しい女ユディトの姿。
クリムトに影響を与えたのはそれまでのヨーロッパ美術だけではなく、実は我々にとっても身近なものから影響を受けたと言われています。それが、桃山時代に花開き、江戸時代まで続いた日本美術の「琳派」です。美術史に詳しくない人でも、尾形光琳の「燕子花図屏風」は美術の教科書などで必ず一度は目にしたことがあると思います。クリムトの特徴である、金色を多用した色彩、様式美すら感じさせる構図や画面内の人々のポーズや、装飾的で余白を効果的に使う作風などに、ジャポニズム様式への強い関心が感じられます。